しゅんらん (春蘭) 

学名  Cymbidium goeringii (C.forrestii, C.virescens, C.virens, C.formosanum)
日本名  シュンラン
科名(日本名)  ラン科
  日本語別名  ホクロ・ホオクロ・ホクリ・エクリ・ハクリ、ジジババ
漢名  春蘭(シュンラン,chūnlán)
科名(漢名)  蘭(ラン,lán)科
  漢語別名  草蘭(ソウラン,caolan)、山蘭(サンラン,shanlan)、朶朶香(ダダコウ,duoduoxiang)
英名  Goering cymbidium

2021/03/03 小平市玉川上水緑地 

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2009/04/20 仙台市東北大学植物園 (自生)

2006/03/21 神代植物公園
 (植栽)

2006/03/26 薬用植物園 (植栽か)

 中国では古くから観賞用に栽培せられ、品種改良が施されてきた(日本では、これを中国春蘭と呼ぶ)。

 はなびらの形により
梅瓣
荷瓣
水仙瓣
蝶瓣
に分け、それぞれに素心などの型を区別する。  
 シュンラン属 Cymbidium(蘭 lán 屬)には、熱帯~温帯アジア・オーストラリア・オセアニアに約55-80種がある。
 そのうち、東アジアに産するものを東洋蘭と呼び、次のようなものがある。

  C. aloifolium(紋瓣蘭・硬葉吊蘭・劔蘭・樹茭瓜)
         
『中国本草図録』Ⅷ/3950) 兩廣・貴州・雲南・ヒマラヤ・インドシナ・マレシア産
  アキザキナギラン C. aspidistrifolium(C.javanicum var.aspidistrifolium,
         C.bambusifolium, C.lancifolium var.aspidistrifolium)
         
紀伊半島・四国・九州・琉球・済州島・臺灣産 
  C. bicolor(硬葉蘭)
兩廣・貴州・雲南・インド・スリランカ・カンボジア・マレシア産
  スゲラン C. cochleare(C.babae;垂花蘭)
臺灣・雲南・ヒマラヤ産
  C. cyperifolium(莎葉蘭・套葉蘭)
兩廣・貴州・雲南・ヒマラヤ・インドシナ・フィリピン産
  ヘツカラン(カンポウラン) C. dayanum(冬鳳蘭・垂蘭)
         
九州・臺灣・福建・兩廣・雲南・ヒマラヤ・インドシナ・マレシア産
  C. defoliatum(落葉蘭)
四川・貴州・雲南産
  C. eburneum(獨占春)
海南島・廣西・雲南・ヒマラヤ産
  C. elegans(莎草蘭)
四川・雲南・チベット・ヒマラヤ産
  スルガラン
(コラン・ギョクチンラン) C. ensifolium(C.ensifolium var.koran, C.ensifolium
         var.arogans, C.ensifolium var.misericors, C.koran, C.gyokuchin
         var.soshin, C.gyokuchin, C.ensifolium var.yakibaran, C.ensofolium
         var.rubrigemmum;建蘭・秋蘭・八月蘭・官蘭;E.Cymbidium)
    var. ensifolium(彩心建蘭)
 『中国本草図録』Ⅳ/1948
    ソシンラン var. susin(C.gyokuchin var.soshim;素心建蘭)
  C. erythraeum(長葉蘭)
四川・雲南・チベット・ヒマラヤ・インドシナ産
  イッケイキュウカ C. faberi(C.oiwakensis;蕙蘭・九子蘭・九節蘭・土百部・化氣蘭)
         
臺灣・華東・河南・陝甘・兩湖・兩廣・西南・チベット・ヒマラヤ産
  キンリョウヘン C. floribundum(C. pumilum, C.floribundum var.pumilum;
         多花蘭・夏蘭)
  『雲南の植物Ⅱ』270・『中国本草図録』Ⅱ/0945 
         
臺灣・浙江・福建・江西・兩湖・兩廣・西南・ベトナム産
  シュンラン C. goeringii(C.forrestii, C.virescens, C.virens, C.formosanum;
         春蘭・朶朶香・草蘭・山蘭)
         
漢土の春蘭を、シナシュンラン C.forrestii とすることがある。
    ホソバシュンラン var.gracillimum(C.goeringii var.angustatum, C.formosanum
         var.gracillimum, C.goeringii var.serratum, C.gracillimum,
         C.serratum;綫葉春蘭)
    var. longibracteatum(C.longibracteatum;春劔)
四川・貴州・雲南産
    var. tortisepalum(C.tortisepalum;菅草蘭)
臺灣・雲南産
  C. hookerianum(虎頭蘭・靑蟬蘭)
 『雲南の植物Ⅱ』270 廣西・西南・ヒマラヤ産
  C. insigne(美花蘭) 
海南島・インドシナ産 
  C. iridioides(C.giganteum;黃蟬蘭)
四川・雲南・チベット・ヒマラヤ産
  カンラン C. kanran(寒蘭)
 『雲南の植物Ⅱ』272
  オオナギラン C. lancifolium(C.javanicum;兔耳蘭)
『週刊朝日百科 植物の世界』9-134
         
琉球・臺灣・浙江・福建・湖南・兩廣・西南・チベット・ヒマラヤ・インドシナ・
         
・マレシア・ニューギニア産
  C. lowianum(C.hookerianum var.lowianum;碧玉蘭)
雲南・インドシナ・アッサム産
  マヤラン C. macrorhizon(大根蘭・腐生蘭)
  ナギラン C. nagifolium(C.lancifolium auct. non Hook)
本州(関東以西)・四国・九州・琉球・朝鮮産 
  C. mastersii(大雪蘭)
雲南・インドシナ・ヒマラヤ産
  C. nanulum(珍珠矮)
海南島・貴州・雲南・ベトナム産
  サガミラン
(サガミランモドキ) C. nipponicum(C.sagamiense, C.macrorhizon var.aberrans,
         C.aberrans)
マヤランの白花品 
  C. qiupeiense(邱北冬蕙蘭)
貴州・雲南産
  ホウサイラン C. sinense(C.hoosai;墨蘭・報春蘭・豐歳蘭・報歳蘭)
 『中国本草図録』Ⅲ/1447 
  C. suavissimum(果香蘭)
貴州・雲南・インドシナ産
  C. tigrinum(斑舌蘭)
雲南・アッサム産
  C. tracyanum(西藏虎頭蘭)
貴州・雲南・チベット・インドシナ産
  C. wenshanense(文山紅柱蘭)
雲南・ベトナム産
  C. wilsonii(滇南虎頭蘭)
雲南・ベトナム産
   
 上記に対して、シュンラン属の植物のうち熱帯産のものを西洋で改良した園芸品をシンビジウムと呼びならわす。
 ラン科 Orchidaceae(蘭 lán 科)については、ラン科を見よ。
 漢名は、3月-4月に花を開くことから。
 和名シュンランは、漢名の音。
 ホクロは、「唇弁にある斑点を顔面のほくろにたとえたものであろう」(『改訂増補 牧野新日本植物図鑑』、但し『牧野日本植物図鑑』には記載がない)。
一説に、ホクロは独頭蘭の意で、一茎一花であることから。
 ジジババは、花の中心にある蕊柱を男に見立て、その下の唇弁を女に見立てて、という。
 日中における蘭の字の意味の変遷については、東洋蘭の訓を見よ。
 奥尻島・本州・四国・九州・済州島・臺灣・華東・河南・陝甘・兩湖・兩廣・西南・チベット・ヒマラヤに分布。
 埼玉県では絶滅危惧Ⅱ類(VU)。
 広く観賞用に栽培する。花の色をはじめとして変異が多く、日本・中国で 多くの栽培型が作られている。
 日本では、江戸時代から 観賞用の栽培をはじめた。
 繁殖は、株分け・播種・組織培養などによる。
 栽培上の注意として、中国では「春不出、夏不日、秋不乾、冬不湿」を説く。
 花は、茹でてお浸しなどにして食う。
 また花を塩漬けにし、湯飲みに入れて桜湯のようにして飲むと香りが甦る。かつて伊豆の名産であったという。
 中国では、スルガラン C. ensifolium(建蘭)・C. floribundum(多花蘭)・シュンラン C. goeringii(山蘭)の根・全草を、蘭草・蘭花と呼び、薬用にする。
 日本では、『花壇地錦抄』(1695)巻四・五「草花 春之部」に、「春蘭 初中。葉ハらんのちさき物にて、花形もらんのごとし」と。
 僕は水を汲んでの帰りに、水筒(すいづつ)は腰に結いつけ、あたりを少し許り探って、「あけび」四五十と野葡萄(えびづる)一もくさを採り、龍膽(りんどう)の花の美しいのを五六本見つけて帰ってきた。帰りは下りだから無造作に二人で降りる。畑へ出口で僕は春蘭の大きいのを見つけた。
 「民さん、僕は一寸『アックリ』を掘ってゆくから、此の『あけび』と『えびづる』を持って行って下さい」
 「『アックリ』て何にい。あらア春蘭じゃあありませんか」
 「民さんは町場もんですから、春蘭などと品のよいことを仰しゃるのです。矢切の百姓なんぞは『アックリ』と申しましてね。皸
(ひび)の薬に致します。ハハハハ」
 「あらア口の悪いこと。政夫さんは、きょうはほんとに口が悪くなったよ」

   
(伊藤左千夫『野菊の墓』1906)

中国春蘭  2006/03/02 小平市

中国春蘭展より
  2006/02/18 神代植物公園
梅瓣
荷瓣

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